2013年6月

<音と染の融合 S・CORE>

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□音禅法要
2013年5月18日、快晴。
サヌカイトの打音と雲水さんの読経が紫野の空に抜けて行きました。

臨済宗のお寺として京都紫野の地に700年続く大徳寺の仏殿で行われた「音禅法要2013」。
東日本大震災と紀伊を襲った水害の犠牲者鎮魂のため、大徳寺管長様をはじめ山内塔頭の和尚様や僧堂の雲水さんからなる大徳寺派の僧侶の皆様の読経、それに熊野本宮大社から宮司様を招き大祓を行うなど、神仏合同の形で法要が行われました。

この法要のもう一つ大きな特徴、それは世界的な音楽家ツトム・ヤマシタ氏による「観・聞・香」など人の感性を介しての読経と音楽の融合です。
川邊はこの音禅法要2013にて、ツトム・ヤマシタ氏の衣装に用いる布と、楽器「サヌカイト」を飾る友禅のよる染布の製作を担当しました。
音禅法要FACEBOOK

□ツトム・ヤマシタ氏との出会い
ツトム・ヤマシタ氏と始めてお会いしたのは2012年の秋。
同志社大学の寒梅館の一室で、同学大学院の村山教授のお引き合わせにて実現し初対面でした。
高校生の頃からプログレッシブ・ロックなどを聴き、関連書籍を読みあさっていた私にとって世界のアートシーンでリスペクトされる日本人ミュージシャン、ツトム・ヤマシタ氏はヒーロー的な存在でした。それから30年が経ち氏に実際にお会いし、さらにプロジェクトでご一緒できるなんて!

□宇宙からのインスピレーション
事の発端は、JAXAと同志社大学が実施した宇宙実験「SPACE SAKURA(スペースサクラ)」でした。
この実験は、世界の宇宙機関で唯一日本のJAXAのみが実施している文化・人文社会分野での科学利用パイロットミッション(芸術利用)で、"無重力空間で友禅で染めた桜が舞う風景を3D動画で取得する"というもの。
JAXAウェブサイト
川邊はこの実験に企画者のひとりとして関わりました。そしてそのアウトリーチの一つとして実験で得られたインスピレーションを用い、禅や宇宙を哲学や芸術として表現される「音禅法要」やツトム・ヤマシタ氏と共同で、染めを開発することになったのです。

□無と有、禅と友禅
私は、今まで習得してきた「友禅」とは、表面上、文様を豪華に「プラス」する方向性をもったもので、無駄なものをそぎ落とす、色で例えるなら白と黒の「禅」とは真逆の性格をもっていると考えていました。(禅に傾倒していた故スティーブ・ジョブス氏が作った製品のほとんどが白か黒)ここが最大の矛盾点で、この音禅法要でのプロジェクトに、真逆の性質を持った友禅でどうやってアプローチできるのだろう、、、と悩み続けていました。
ある日、ツトム・ヤマシタ氏にこの件を相談したところ、「それでいい」と一言。・・・ますます分からなくなってきました。

□結合するための「素」
「禅」の本質までは遠く及ぶはずもありませんが、「音禅法要」で使う染布を製作する上で不可欠な考えとして私なりに導き出した答え、それは、不必要な飾りや鎧を省くことで、物事の本質とも言うべき「素」に近づき、新たな融合を得ることができる、でした。
そぎ落とす、素になる、数学でいう素因数分解に相当する考えを染めの中に持ち込む事にしました。
さて、加える方向性の友禅を素まで分解する事は可能なのでしょうか・・・

□無になる染
正確な染を行うには長年の経験や技術が必要です。我々友禅の業界の人間も長い時間をかけその技を磨いてきました。作品を作るにしても何をモティーフにするのかや、どのような構図にするかなど、作品の出来栄えに大きな影響があり、作家はそこに最大の腐心します。私はここの観念、すなわち「構図」「色」「テクニック」など、長年知識として身に着けてきた鎧である「作画意図」を思い切って捨てる染め方として、墨流し技法を応用した今回の「S・CORE(エスコア)」の染を考えつきました。水面に浮かせた色を、ツトム・ヤマシタ氏の奏でるサヌカイトの波動のみで動かし布に染着させるこの技法は、その染に関わった誰もが自分の作為を反映させる事はできません。全くの「無」により描き出される文様・・・「S・CORE(エスコア)」はまさに、人の作為を無視した、究極の抽象といえるかもしれません。

今後の「S・CORE(エスコア)」の展開にご期待ください。

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<S・CORE(エスコア)>
サヌカイト音の波動による染。
サヌカイト、サウンド、ソニック、ソメ、スペース、サクラ、の頭文字の「S」と芯を意味する「CORE」を組み合わせた造語。
Score(楽譜)の意味も持つ。

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